特定技能「自動車整備」徹底ガイド|要件・メリット・手続きの流れをわかりやすく解説
作成日:2025年3月23日
最終更新日:2025年3月23日
日本の自動車整備業界では、少子高齢化に伴う整備士不足が深刻化し、今後も人手不足はさらに加速すると予測されています。そこで注目を集めているのが、2019年に導入された特定技能制度です。自動車整備分野も特定技能14分野の一つとして指定されており、一定の試験に合格した外国人を即戦力として受け入れることが可能です。
本記事では、特定技能「自動車整備」の要件や試験、導入メリット、在留資格申請の手続きなどをわかりやすく解説します。整備士不足に悩む工場やディーラーの皆さまは、ぜひ参考にしてみてください。
特定技能「自動車整備」とは?背景と概要
特定技能は、人材不足が深刻な14分野で外国人就労を認める在留資格で、その一つに自動車整備分野が含まれています。世界トップクラスの自動車産業を支える日本ですが、整備士の高齢化と若年労働力の減少により、自動車整備の人手不足は深刻化しています。
そこで、海外から技能試験・日本語試験に合格した外国人を受け入れ、整備士不足を緩和するとともに、現場の生産性・サービス品質を確保しようというのが特定技能の狙いです。整備士不足の対策として、技能実習とは異なる「即戦力としての就労」を前提とする特定技能の導入が注目されています。
特定技能「自動車整備」の在留資格要件
外国人が自動車整備分野で特定技能を取得するには、以下の要件を満たす必要があります。
1. 自動車整備分野の技能試験合格
自動車整備の基礎技術や安全管理、作業工程の知識などを問う「自動車整備特定技能評価試験」に合格する必要があります。筆記・実技を通じて、基本的な整備技術と点検・修理に関する理解を確認する試験です。
技能実習2号修了者や関連する資格を持つ外国人は試験が免除になる場合がありますが、詳細は法務省や国土交通省の公式情報をチェックしてください。
2. 日本語試験(概ねN4相当)の合格
整備士はお客様や同僚とコミュニケーションを取る機会が多く、また安全確保にも日本語力が欠かせません。そのため、日本語能力試験(JLPT)N4またはJFT-Basicなど、日本語の基礎力を証明するテストに合格していることが求められます。
3. 受け入れ企業側の要件
特定技能で外国人を受け入れる自動車整備工場やディーラーなどの事業所は、下記の条件を満たす必要があります。
- 日本人と同等以上の賃金を保証する
- 登録支援機関や自社支援計画により生活・就労サポートを実施
- コンプライアンス(不正な仲介や過度な手数料の徴収をしないなど)の徹底
特定技能1号として在留する外国人が通算5年間の就労を終え、2号へ移行する仕組みは自動車整備分野では現時点(2023年末時点)では認められていません。とはいえ、5年という十分な期間で外国人技術者を育成・戦力化できるメリットがあります。
特定技能「自動車整備」を導入するメリット
自動車整備業界で特定技能を活用するメリットは以下の通りです。
- 人材不足の解消:高齢化や若手不足により人手が足りない整備工場やディーラーにとって、一定のスキルを持った外国人材を確保しやすい。
- 作業効率とサービス品質の向上:試験合格者は基本的な整備技術を身につけているため、教育コストを抑えながら現場の生産性を高められる。
- 組織の多様性:外国人スタッフの加入で、新しい視点や職場の活性化が期待できる。海外顧客や外国語の問い合わせにも対応がスムーズになる場合も。
- ブランド力・競争力の向上:優秀な外国人整備士が活躍することで、サービス向上や技術の共有が促進され、企業の評価が高まる。
導入の流れ|特定技能「自動車整備」申請プロセス
特定技能で外国人を自動車整備分野へ受け入れる際は、主に以下の手順で進めます。
- 試験合格者の募集・面接:海外または国内で技能・日本語試験に合格した候補者を企業側が面接し、採用を決定。
- 雇用契約の締結:就労条件、賃金、業務内容などを明示し、外国人本人と契約を結ぶ。
- 在留資格認定証明書(COE)の申請:企業が必要書類を整え、出入国在留管理庁に提出。登録支援機関を活用する場合はその計画も提出。
- COE交付・ビザ申請:COEが交付されたら、本人が居住国の日本大使館・領事館でビザを申請。
- 来日・職場定着支援:住居探しや生活オリエンテーション、日本語補習などのサポートを行い、スムーズに業務に適応させる。
各ステップでの書類作成や手続きは煩雑なため、登録支援機関や行政書士など専門家の助力を得るとスムーズです。
受け入れ企業が注意すべきポイント
1. 技術と安全管理
自動車整備は車検や修理など、安全面に直結する重要な業務です。外国人スタッフが適切に作業できるよう、日本語でのマニュアル整備や多言語ツールの活用を検討しましょう。整備士資格の取得支援や定期的な研修で安全管理意識を高めることも重要です。
2. 賃金・労働条件
特定技能では日本人と同等以上の賃金を保証することが義務付けられています。処遇が不十分だとビザ更新が認められないリスクもあるため、社会保険や休日、残業代など法律を遵守した環境づくりが必須です。
3. 生活サポートとトラブル防止
初めて日本で暮らす外国人には、住居、銀行口座開設、行政手続きなどのサポートが欠かせません。登録支援機関と連携し、多文化コミュニケーションを円滑に進める体制を整えることで、離職率を下げ安定した人材確保につながります。
事例:外国人整備士で作業効率化に成功したディーラー
ある自動車ディーラーでは、若手整備士の退職が相次ぎ、修理や点検の納期が遅れがちになっていました。そこで技能実習を修了した外国人と特定技能試験に合格した外国人を数名採用し、現場のマンパワーを強化。
結果として、待ち時間の短縮や顧客満足度の向上が実現しただけでなく、外国人スタッフが英語や母国語で海外のオーナーからの問い合わせにも対応できるようになり、さらなる顧客層拡大につながったという成功例があります。
まとめ|特定技能「自動車整備」で優秀な外国人材を確保
深刻な人手不足に悩む自動車整備業界では、特定技能を活用した外国人材の受け入れが有力な解決策となり得ます。必要となるのは、技能試験・日本語試験に合格した即戦力人材の確保と、企業側の整備環境・サポート体制の整備です。
適切な登録支援機関や専門家の協力を得て、在留資格申請から来日後の生活支援、職場での研修や評価制度の導入までをスムーズに進めることで、安定的に高品質な整備サービスを提供できるようになります。
自動車整備業界は技術革新が進む一方、技術継承や若年層離職など課題が山積しています。特定技能外国人の力を上手に取り入れることで、業務効率を上げつつ新たな視点を取り込み、企業の未来を切り拓く大きなきっかけになるでしょう。
