特定技能「林業」は対象外?現状と外国人活用の可能性を徹底解説
作成日:2025年3月23日
最終更新日:2025年3月23日
日本の林業は、森林資源の活用と環境保護を両立させる重要な産業でありながら、少子高齢化や過疎化による労働力不足が深刻化しています。2019年に導入された特定技能制度は、14分野にわたって外国人を新たに受け入れる在留資格として大きな注目を集めていますが、結論から言えば林業は特定技能の対象外となっています。本記事では、その背景と現状、林業で外国人材を活用する際に考えられる他の制度や今後の見通しについて詳しく解説します。林業の担い手不足に悩む方は、ぜひ参考にしてみてください。
特定技能と林業の関係|なぜ対象外なのか?
特定技能制度は、人手不足が深刻な14分野(介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造、外食業)を受け入れ対象として、海外から一定の技能試験・日本語試験に合格した外国人を即戦力として雇用できる仕組みです。しかし、林業は現在この14分野に含まれていないため、特定技能ビザを使って外国人を林業の現場に直接雇用することは不可能です。
林業も少子高齢化や過疎化が進む中で深刻な人材不足に陥っており、山林の整備や木材生産に支障が出ているケースも多々あります。業界団体や一部地域では、特定技能の対象拡大を求める声がありますが、現時点(2023年末)の制度上では対象外というのが実情です。
林業業界が抱える人材不足と外国人活用の必要性
林業は山間地域での伐採作業や森林整備など危険を伴う労働が多く、若年層の定着が難しいと言われています。さらに、収入や労働環境が不安定になりやすく、過疎化が進む地域では後継者不足が一段と深刻です。
その一方で、近年は木材需要の高まりやSDGs(持続可能な開発目標)などの流れから、国産材を利用した建材やバイオマスエネルギーへの活用が期待されており、林業の重要性は増しています。海外からの人材を活用して、人手不足と技術継承の問題を解決できないかという声も次第に高まってきました。
特定技能「林業」が将来認められる可能性はある?
特定技能は、当初14分野を対象にスタートしましたが、今後の社会状況や業界団体の要望に応じて、対象分野が拡大される可能性はゼロではありません。林業の人手不足も深刻であるため、将来的に「林業」を追加する議論が進む可能性はあるものの、現時点で具体的なスケジュールや方針が示されていないのが実情です。
もし特定技能「林業」が実現した場合には、森林の施業管理や伐採、造林、保育作業などを担う外国人の受け入れルールが整備されることでしょう。しかし、山間部での安全管理や重機の運用など、林業ならではの課題も多いため、かなり厳格な要件が設定される可能性があります。
林業で外国人材を活用する代替的な方法
特定技能が使えない現状でも、林業の現場で一定の海外人材を活用するには、他の在留資格や制度を検討する必要があります。主な選択肢としては、以下のようなものが考えられます。
1. 技能実習制度
技能実習制度は、日本の技術や知識を学び母国に還元することを目的としています。林業分野も技能実習の対象職種として認められており、伐採や造林などの作業で技能実習生が活躍する事例が増えています。ただし、実習が終了すれば帰国が基本であり、長期的な人材確保には限界があります。
2. 留学生アルバイトや「特定活動」ビザ
山間部など地域によっては、外国人留学生が週28時間以内でアルバイト可能な在留資格を持つケースもありますが、林業の現場での作業は危険を伴うため実際には実施ハードルが高いです。また、特定活動ビザを用いて企業の研修生や実習生として呼び寄せる方法も検討できますが、条件や期間に制限があるので要注意です。
3. 「技術・人文知識・国際業務」などの専門職採用
経営やIT、国際貿易などホワイトカラー業務において外国人材を活用する場合は「技人国ビザ」が選択肢となります。例えば林業関連の研究や森林コンサルティングなどの専門職であれば、学歴や職務内容が合致すれば採用可能です。ただし、現場での伐採・搬出作業などブルーカラー業務には対応できません。
メリットと課題|林業で外国人を採用する意味
林業界が将来的に特定技能「林業」や他の制度で外国人を積極的に受け入れる場合、どのようなメリットと課題があるでしょうか。
メリット
- 人手不足の緩和:高齢化で担い手が減少する中、若い海外人材が労働力を補う
- 地域活性化:外国人の定住により、過疎地域に新たなコミュニティ形成や消費活性が期待される
- 技術とノウハウの共有:外国人スタッフが林業技術を学び、母国との国際的な交流が深まる可能性
課題
- 安全管理:山間部での作業は危険が多く、言語の壁や文化の違いで事故リスクが高まる恐れ
- 生活環境の整備:過疎地域では住居や交通手段、インフラが不十分な場合があり、外国人定着が難しい
- 制度上の制約:特定技能の対象外であるため、技能実習など他の在留資格を使うしかない現状
将来展望|特定技能対象拡大への期待
林業界からは、特定技能の対象に「林業」を含めてほしいという要望が出ており、国が検討する可能性はあります。しかし、森林は国の重要資源であり、安全管理や環境保護の観点から厳しい要件や試験制度が設けられることが予想されます。実際に対象に加わる時期や具体的内容は未定であり、今後の政策動向を注視するしかないのが現状です。
一方で、技能実習制度を通じて既に外国人が林業現場で働いている事例も増えています。これらの実績が積み重なり、特定技能への移行や拡張が進む道筋ができれば、林業の人材不足を根本的に解決する可能性が高まるでしょう。
まとめ|特定技能「林業」は現時点で対象外。今できる外国人活用策を模索しよう
特定技能制度は14分野を対象に外国人材を即戦力として迎え入れる仕組みですが、林業は現在その対象外です。業界の深刻な人材不足を考えると、将来的に制度拡大が望まれるものの、具体的な動きはまだ不透明。
当面は技能実習制度などを活用して外国人材を確保し、山林整備や木材生産を支えている事例が少なくありません。林業における外国人活用のメリットは大きいものの、安全管理や住環境整備など課題も多いため、受け入れにあたっては地域や行政、専門家の連携が不可欠です。
今後、特定技能の対象が拡大される動きがあれば、林業界の人材不足解消につながる大きな一歩となるでしょう。現段階では、既存の在留資格や技能実習制度を活用しながら、外国人材受け入れの可能性を模索することが求められます。
