フィリピン人特定技能の完全ガイド|制度概要・送り出し体制・受け入れ企業の成功ポイント
作成日:2025年3月23日
最終更新日:2025年3月23日
日本の深刻な人手不足を解消するために導入された特定技能制度は、海外から幅広い人材を受け入れる新たな在留資格として大きな注目を集めています。中でもフィリピンは、英語力やホスピタリティの高さ、海外就労への意欲の強さなどから、特定技能の重要な送り出し国の一つとなっています。この記事では、フィリピン人特定技能がなぜ注目されるのか、政府間協定の背景や企業が受け入れる際のポイントを、公的機関の一次情報も交えながら詳しく解説します。採用担当者やフィリピンからの就職を目指す方にとって、必見の内容です。
フィリピン人特定技能が注目される背景
日本国内の外国人労働者数は年々増加しており、出入国在留管理庁の統計によれば、フィリピン国籍の在留者数はベトナム、中国に次ぐ上位に位置しています。特定技能制度がスタートした2019年以降、技能実習や留学などで来日していたフィリピン人材が、特定技能への移行を検討するケースが増加中です。また、日本とフィリピンは二国間協定(Memorandum of Cooperation, MOC)を締結しており、政府公認の送り出し機関を通じて適正に人材を派遣する仕組みが整っています。
英語力とホスピタリティの高さ
フィリピンの公用語の一つである英語は、世界的にも比較的高いレベルで普及しています。そのため、日本語と英語の二言語を使いこなせる人材が多く、職場でのコミュニケーションが円滑になりやすいというメリットがあります。また、明るく柔軟な国民性から、介護や外食など接客の現場で評価が高い点も特徴です。
海外就労への意欲
フィリピン政府は海外出稼ぎ労働者(OFW)の送り出しを主要な政策として位置づけており、海外で働くことにポジティブな人が多い国です。日本側の求人ニーズとフィリピン人材の就労意欲が合致し、特定技能分野でも人材が活発に移動しています。
フィリピン人材の送り出し体制
フィリピンでは、Department of Migrant Workers(DMW)やPhilippine Overseas Employment Administration(POEA)(2022年にDMWへ統合)などの政府機関が、海外就労を希望するフィリピン人に対してライセンス認定された人材紹介・送り出し企業を管理監督しています。これにより、不適切なブローカーを排除し、適正な手続きを踏んだ上で日本へ渡航できる環境が整えられています。
POLO / MWOの役割
日本国内においては、Philippine Overseas Labor Office(POLO)やMigrant Workers Office(MWO)が、大使館や総領事館と連携しながらフィリピン人労働者の保護・サポートを行います。企業側が適切な雇用契約を提示しているかの確認や、問題が発生した場合の相談窓口として機能しています。
主な受け入れ分野と強み
特定技能では14の業種が受け入れ対象ですが、フィリピン人材が特に多いのは以下の分野です。
- 介護
- 外食業
- 建設
- 宿泊
- ビルクリーニング
特に介護分野では、過去にEPA(経済連携協定)や技能実習で実績を積んだ人材が多く、現場で必要とされるコミュニケーション力を発揮しやすいと評価されています。外食業や宿泊業においても、英語力とホスピタリティを武器に即戦力として活躍しています。
介護分野の例
高齢化が進む日本で、介護人材の需要はますます高まっています。フィリピン人は英会話によるコミュニケーションが可能な点に加え、患者や入所者に対して明るく丁寧なケアを行う例が多く報告されています。介護現場で必要な基礎用語を覚えるための学習意欲も高く、長期的な定着につなげられるケースが増えています。
受け入れ企業の注意点と成功のポイント
フィリピン人材を特定技能で受け入れる際は、以下の点に注意が必要です。
- 日本語学習支援
フィリピン人の英語力が高いとはいえ、現場では日常会話や専門用語の日本語力が必須です。入国前の学習環境や試験対策をサポートする送り出し機関の実績を確認したり、来日後も継続的な日本語研修を行ったりすることで定着率を高めることができます。 - 生活サポートの充実
銀行口座の開設や役所手続き、住居探しなど、外国人が初めて経験する手続きは多岐にわたります。登録支援機関や社内担当者が中心となり、円滑なサポートを実施することが欠かせません。 - キャリアパスの提示
特定技能1号は通算5年までの在留が可能で、建設や造船などの一部分野では特定技能2号への移行も視野に入ります。受け入れ企業が長期的なキャリアプランを提示することで、フィリピン人材のモチベーションを維持しやすくなります。 - 文化的配慮とコミュニケーション
フィリピンはカトリック教徒が多く、宗教行事や休日の過ごし方が日本と異なる場合があります。チーム内で理解を深め、職場でのコミュニケーションを円滑にする取り組みが重要です。
成功事例と今後の展望
例えば、外食業の店舗を複数展開する企業では、複数名のフィリピン人を特定技能で受け入れ、日本語研修やマニュアル整備を徹底。結果として、店舗の外国人対応力が向上し、海外観光客への接遇にも好影響が見られたとの報告があります。介護施設でも、明るくコミュニケーションを取るフィリピン人材が利用者の満足度を高め、スタッフ間の協力体制強化につながったという事例が多数報告されています。
今後、フィリピン国内の日本語教育がさらに進み、送り出し機関の整備が拡充されれば、特定技能で来日するフィリピン人材は一層増えると予想されます。少子高齢化が深刻な日本にとって、フィリピン人材は重要なパートナーとして役割を果たし続けるでしょう。
まとめ
フィリピン人特定技能は、英語力と高いホスピタリティが評価され、介護や外食、建設など幅広い分野で即戦力として期待されています。政府間協定に基づく送り出し体制が整備されており、POEAやDMW、POLO(MWO)など公的機関のサポートが充実していることも、企業が安心して受け入れを行える要因といえます。
一方で、日本語学習支援や生活サポート、文化的配慮など、企業側に求められる責任も大きいです。これらを怠ると離職率が上がり、互いに不幸な結果を招く可能性があります。公的機関の一次情報を活用し、正しい手順と十分なサポート体制を整えた上で、フィリピン人材との協力関係を構築することが、特定技能制度の成功を左右する鍵になるでしょう。
