特定技能「鉄道」は対象?現状と外国人活用の可能性を徹底解説
作成日:2025年3月23日
最終更新日:2025年3月23日
日本の鉄道業界は世界に誇る高い技術力や安全性を維持しながらも、少子高齢化による人手不足や技術継承の課題に直面しています。2019年に導入された特定技能制度は、深刻な人手不足が認められる14分野で外国人の就労を認めていますが、結論から言うと「鉄道」分野は現在、この対象外となっています。
本記事では、特定技能と鉄道の関係や、外国人材を活用するための代替的な方法などを詳しく解説します。鉄道会社や関連事業者で人手不足に悩む方は、今後の参考にぜひご覧ください。
特定技能「鉄道」は存在する?対象分野の現状
特定技能は2019年4月に施行された新しい在留資格で、14分野(介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業)が対象となっています。
残念ながら、「鉄道」分野は公式には含まれていません。そのため、特定技能の枠を使って鉄道事業者が海外から運転士や保線要員、車両整備士などを直接採用することはできないのが現状です。
鉄道業界も運転士や整備、駅務スタッフなどで人手不足が顕在化しつつあり、将来的に特定技能対象分野へ拡大を求める声が上がっていますが、現時点では具体的な制度変更の見通しは立っていません。
鉄道業界の人手不足と外国人材の活用の必要性
鉄道は日本のライフラインとして欠かせない存在ですが、以下のような課題に直面しています。
- 高齢化と世代交代:ベテラン運転士や保線担当者が定年退職し、若手人材の確保と技術継承が難しくなっている
- 地方路線の維持:地域の過疎化や人口減少に伴い、路線廃止の議論が進む一方、人手不足で経営が厳しい
- 新たなサービス拡充:訪日外国人客への対応や観光列車など多彩なサービスを展開するため、接客や語学力を持つ人材が不足
こうした背景を踏まえると、海外からの人材をうまく採用できれば、人的リソースの確保や国際感覚の導入につながり、鉄道業界の将来を支える大きな力となる可能性があります。しかし、特定技能が使えない今、別の在留資格での活用を検討する必要が出てきます。
特定技能が使えない今、鉄道会社ができる外国人材活用の手段
特定技能が現状「鉄道」を対象外としているため、鉄道業界で外国人を直接運転士や駅員などとして雇用するのは困難です。とはいえ、以下のような選択肢が考えられます。
1. 技術・人文知識・国際業務(いわゆる「技人国ビザ」)
外国人の学歴や専門性が合致すれば、「技術・人文知識・国際業務」在留資格で海外人材を採用可能です。具体的には、システムエンジニアとして鉄道の運行管理システムや車両制御システムの開発、国際営業や企画、翻訳・通訳などが対象となり得ます。ただし、運転や保線作業、駅務などの現場業務は認められません。
2. 留学生のアルバイト・新卒採用
留学生は在学中、週28時間以内のアルバイトが認められています。また、卒業後は「特定活動ビザ(新卒就職活動)」を経て技人国などに変更し、オフィス業務や企画業務で採用するケースがあります。運転士や駅務には直接つながりにくいですが、バックオフィスや接客対応で外国人留学生を起用するのも一案です。
3. 技能実習制度(保線や車両整備などの周辺業務)
技能実習は日本の技術を習得して母国に還元する制度で、原則3~5年を限度に在留可能。ただし、鉄道運転業務は対象外であり、保線や車両整備に類似する職種が認められるかは限定的です。詳細は技能実習生を受け入れている監理団体や法務省の公表資料を確認する必要があります。
特定技能「鉄道」拡大の可能性は?
特定技能の対象分野が今後拡大するかどうかは、国土交通省や厚生労働省、法務省などの省庁間協議や業界団体からの要望によって変わってきます。鉄道業界の人手不足は大きな問題であり、将来的に「運輸・交通分野」を対象に含める案が浮上する可能性もありますが、現時点では具体的な制度改正の動きは限定的です。
仮に鉄道が対象に追加されるとすれば、運転士や駅員を含む幅広い職種が対象になるか、安全管理上の観点から厳しい要件が課されるかなど、詳細な制度設計が必要となるでしょう。いずれにしても、業界全体の要望や安全面の議論が重要となります。
鉄道業界での外国人材活用メリットと注意点
特定技能「鉄道」が将来実現したり、他の在留資格で外国人を採用したりする際、期待できるメリットと注意点は下記の通りです。
メリット
- 人手不足の解消:運転士や駅員、整備担当など、慢性的に不足している職種を補える
- 国際対応・観光需要への対応:増加する訪日外国人旅行客に対して多言語サービスを強化
- イノベーション促進:海外の技術・視点を取り入れ、業務効率化や新しいサービス開発につながる
注意点
- 安全管理・言語の壁:事故を防ぐための安全教育や言語面でのサポートが必須
- ビザ要件・法令遵守:対象外分野では特定技能を利用できない。別の在留資格を使う場合もコンプライアンスが厳しく問われる
- 受け入れコスト・支援業務:住居探しや生活支援などの負担をどう分担するか検討が必要
まとめ|特定技能「鉄道」は未指定。今できる外国人活用策を検討しよう
現行の特定技能では、「鉄道」分野は対象に含まれておらず、運転士や駅員などの業務で外国人を特定技能として直接雇用する道はありません。しかし、鉄道業界の人手不足は深刻で、将来的に対象分野拡大が議論される可能性はあります。
当面は、技術・人文知識・国際業務や技能実習(周辺作業を限定)といった既存の在留資格を活用して、バックオフィスやIT、保線・車両整備などの部分で外国人材を活用する方法を検討するのが現実的です。
日本のライフラインを担う鉄道業界が持続的に発展するには、人材確保と技術継承が不可欠。外国人材の力をうまく取り入れ、安全とサービス品質を維持しながら変化する社会のニーズに応えられる体制を構築することが、これからの課題となるでしょう。
