特定技能「農業」徹底ガイド|要件・メリット・申請フローをわかりやすく解説

作成日:2025年3月23日
最終更新日:2025年3月23日

日本の農業では、高齢化と後継者不足が深刻化し、地域活性化や食料自給の観点から人手不足の解消が大きな課題となっています。そこで注目されているのが2019年に導入された特定技能制度です。農業は14分野の一つとして指定されており、海外から一定の試験合格者を即戦力として受け入れることが可能です。

本記事では、特定技能「農業」の概要や要件、受け入れ企業(農家)側の準備・メリットなどを詳しく解説します。農業の人手不足や事業拡大に悩む方は、ぜひ参考にしてみてください。

特定技能「農業」とは?制度の背景と概要

特定技能は、人材不足が深刻な14分野で外国人の就労を認める新しい在留資格で、農業分野も対象の一つです。技能実習制度とは異なり、“学ぶ”よりも“働く”ことを主目的とする点が特徴で、即戦力として農作業に従事することが期待されます。

日本の農業は高齢化に伴う離農や後継者不足が顕在化しており、農地の集約や規模拡大を進めようにも人手が足りず、収穫や出荷作業、管理業務が追いつかないケースが多発。特定技能の導入によって、海外から一定の技能試験・日本語試験合格者を確保し、農場経営を安定化させる取り組みが進みつつあります。

特定技能「農業」で就労可能な業務

特定技能「農業」分野では、以下のような作業が対象となります。

  • 野菜・果樹の栽培管理:播種、定植、除草、潅水、収穫など
  • 畜産業務:家畜の飼育・管理・搾乳・給餌など(試験区分により対応可)
  • ハウス内作業:ハウス施設の温度管理、害虫駆除、苗の育成など
  • 出荷・包装:選別、梱包、ラベル貼りなど、農産物を市場へ出荷するための最終作業

なお、バックオフィス業務や経営管理、別業種の作業などは特定技能の範囲外となるため注意が必要です。

特定技能「農業」の要件|試験と日本語力

外国人が特定技能「農業」で就労するには、主に以下の条件を満たす必要があります。

1. 農業分野の技能試験合格

農業特定技能評価試験で、基本的な農作業技術や安全衛生知識、管理方法などを確認されます。
区分としては「畑作・野菜」「果樹」「畜産」などに分かれ、それぞれの試験に合格すると該当分野での就労が可能。技能実習2号を修了している外国人の場合、試験が免除される場合もあります。

2. 日本語試験(概ねJLPT N4相当以上)の合格

農業現場では指示やコミュニケーションが欠かせません。日本語能力試験(JLPT)N4程度、またはJFT-Basicなどの日本語試験に合格していることが要件となります。

3. 受け入れ企業(農家・法人)の要件

特定技能1号では、受け入れ側が下記の条件を満たす必要があります。

  • 適正な労働条件(日本人と同等以上の賃金、福利厚生など)を保証
  • 登録支援機関との連携、または自社支援計画による生活・就労サポートを実施
  • 法令遵守(不当な仲介手数料などのトラブル回避)
  • 経営の安定性・継続性が認められ、適切な業務指導ができる

導入メリット|特定技能「農業」で期待できる効果

特定技能を活用し、農業分野で外国人材を受け入れるメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 人手不足の緩和:繁忙期や早朝作業など、人手を確保しにくい時間帯に対応できる人材を確保しやすい。
  • 生産効率の向上:技能試験合格者は一定の基礎技術を持っているため、教育コストを抑えつつ収穫や管理作業の効率を高められる。
  • 多文化共生と組織活性化:外国人スタッフが加わることで、新しい視点やコミュニケーションが生まれ、職場の活性化にも寄与。
  • 将来的な拡大余地:技能実習2号を修了した人材から特定技能へ移行するケースなど、長期的な戦力化が期待できる。

申請手続きの流れ

特定技能「農業」で外国人を雇用する場合、下記のプロセスを経るのが一般的です。

  1. 試験合格者の面接・選考:海外・国内で農業技能試験と日本語試験に合格した候補者を企業側が募集・面接。
  2. 雇用契約締結:賃金や労働時間、作業内容などを詳細に示した契約書を作成し、本人と締結。
  3. 在留資格認定証明書(COE)申請:企業(農業法人・農家)が必要書類を揃え、出入国在留管理庁に提出。
    登録支援機関を活用する場合は、その計画も合わせて提出。
  4. COE交付・ビザ申請:COEが発行されたら、本人が海外の日本大使館・領事館にてビザ申請を行う。
  5. 来日・生活支援:外国人スタッフが来日後、住居確保や行政手続き、日本語補習などの支援を開始し、農作業へとスムーズに導入。

煩雑な手続きが多いため、登録支援機関や行政書士など専門家のサポートを受けるとスムーズです。

受け入れ企業が注意すべきポイント

1. 季節変動と労働時間管理

農業は季節によって作業量が大きく変動します。繁忙期の労働時間が長くなりがちですが、労働基準法を守りながら適正な休暇や残業代を保証しなければなりません。外国人スタッフに対しても日本人と同じように法定労働時間を超過する際の管理が重要です。

2. 安全衛生管理と言語の壁

農作業では機械を扱うケースや農薬の使用など、安全面に配慮が欠かせません。作業マニュアルを多言語化する、定期的な安全講習を行うなど、言語や文化の違いによる事故を防ぐ対策が必要です。

3. コミュニケーションと地域との関わり

農業は地域コミュニティとの結び付きが強い業種です。外国人スタッフが地域行事や近隣との交流に参加しやすい環境を整えることで、定着率を高められます。日本語学習支援や地域イベントへの参加など、コミュニケーション機会を増やす工夫が大切です。

成功事例|外国人スタッフで収穫作業の効率UP

ある果樹園では、収穫期にピークを迎える短期間に国内スタッフの確保が困難でした。そこで特定技能「農業」に合格した外国人2名を採用したところ、基礎的な栽培管理と収穫の技術をすでに身に付けており、現場研修を短縮できたといいます。

企業は登録支援機関と連携し、住居確保や地域の生活ルール説明などを手厚く実施。結果として、繁忙期の収穫遅れを防ぐだけでなく、外国人スタッフが積極的にSNSを活用して商品PRに参加し、販路拡大にもつながったとの成功例が報告されています。

まとめ|特定技能「農業」で人手不足を解消し生産力を高めよう

特定技能「農業」は、高齢化や離農による人手不足の深刻化が進む日本の農業において、大きな可能性を持つ在留資格です。一定の農業技能試験・日本語試験に合格した外国人を即戦力として採用できるため、繁忙期の収穫作業や日常的な栽培管理などで労働力を補うことが可能です。一方で、適切な労働条件の保証や安全教育、生活支援など受け入れ側にも責任が伴います。

コストや事務手続きが増える面はありますが、それを上回るメリットとして、安定的な労働力確保や多様性の導入による組織活性化が期待できます。今後、農業分野の競争や市場拡大が続く中で、特定技能外国人の活用は、経営力や地域コミュニティへの貢献度を高める一つの有力な選択肢となるでしょう。

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