特定技能外国人の受け入れ費用と管理費の相場を徹底解説
作成日:2025年6月24日
最終更新日:2025年6月24日
特定技能制度を活用して外国人労働者を受け入れる際に発生する費用について、初期費用から毎月の管理費・支援費まで網羅的に解説します。人手不足解消の切り札として注目される特定技能ですが、「具体的にどれくらいのコストがかかるのか」が分からず二の足を踏む企業担当者も少なくありません。
本記事では、登録支援機関や監理団体へ支払う料金の相場、職種・地域による費用傾向、企業が負担すべきその他のコスト(住居費や教育費等)について、最新データや現場の声を交えて詳述します。企業の予算設計や受け入れ判断に役立つ情報をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
登録支援機関への支援費(管理費)の相場
特定技能外国人を受け入れる企業は、支援計画の実施を自社で行わない場合、「登録支援機関」に支援業務を委託します。その際に発生する支援委託料(管理費)は、1人当たり月額2~3万円程度が一つの目安です。
この金額は技能実習制度における監理団体への監理費(平均月額約4万円)より低めですが、法的な上限は定められていません。実際の料金は支援機関や地域・業種によってまちまちであり、複数機関から見積もりを取って相場を把握することが重要です。
なお、支援委託料の料金体系は大きく2通りあります。【月額定額制】の場合は1名につき毎月定額を支払い、【支援項目ごとの従量制】の場合は個別の支援内容(事前ガイダンス、生活オリエンテーション、定期面談同行など)ごとに料金が設定されます。
例えば従量制の場合、事前ガイダンスが1回2~6万円、生活オリエンテーションが1回3~8万円、定期面談が1回1~1.5万円といった単価が一般的です。さらに支援項目とは別に顧問基本料を月額2.5~5万円ほど請求する機関もあります。月額制か従量制かでトータルコストが大きく変わるため、契約前に「月額料金に何が含まれるのか」や追加費用の有無を必ず確認しましょう。
▶現場の声: 2023年のインタビューでは、特定技能の管理システムを手掛けるCROSLAN社の川村代表が「ほとんど支援が発生しないケースでも、特定技能外国人1名につき毎月2~3万円の管理費を払い続け、人数が増えると何十万・何百万と雪だるま式に増える。管理費が割高だと感じ始めている企業が多い」と指摘しています。技能実習とは異なり、特定技能では既に日本語や業務に慣れた人材も多いため、「支援内容の割に費用が高い」という不満につながりやすいようです。このため最近では、自社で支援を行ってコストダウンを図る企業も出てきています(※自社支援には一定の要件を満たし入管に認められる必要があります)。
初期費用の内訳と相場(イニシャルコスト)
特定技能で外国人を採用するまでにかかる初期費用は、主に以下の項目があります。国内在住人材を採用する場合と海外から呼び寄せる場合で項目が一部異なりますが、まず共通する代表的な費用とその相場を確認しましょう。
- 人材紹介手数料(紹介料): 1名あたり約10~30万円が相場です。人材紹介会社や登録支援機関経由で候補者を紹介してもらう場合に発生し、多くは固定額10~30万円または年収の20~30%程度。例えば年収300万円の人材なら紹介料60~90万円となるケースもあります。※建設分野では民間の有料職業紹介が禁止されており、ハローワーク等を利用する必要があります。
- 在留資格申請代行費: 行政書士や弁護士への依頼料として約10~20万円/人が目安です。入管への申請書類作成・提出を専門家に委託する費用で、社内に詳しい人材がいれば自社対応も可能ですが、不備なくスムーズに許可を得るため専門家に任せる企業が多いようです。
- 事前ガイダンス費用: 来日前に行う「就業条件や生活ルール等の説明」サービスの費用で、1回あたり1.5~4万円程度です。登録支援機関に委託する場合は支援委託料に含まれることもあります。
- 健康診断費: 雇入れ前の一般健康診断に1人あたり約1万円かかります。法律で義務付けられる入社時健診で、内定後~就業開始前に受診させます。
- 住居の手配費用(社宅準備費): 会社が住居を用意する場合、物件の初期費用(敷金・礼金・仲介手数料など)や家具家電購入費として数万円~数十万円の支出が発生します。自社所有の社宅や寮がある場合は新規費用はかかりませんが、アパート等を借り上げる場合は契約関連費用を企業が負担します。
- その他初期費用: 業種によっては作業着・工具の支給、講習受講費などが必要です。例えば製造業や建設業では、入社時に1人あたり数万円の備品購入・研修費が発生するケースもあります。
こうした費用を合計すると、国内在住の特定技能人材を1人採用する場合の初期費用は約36~156万円が目安とされています。幅が大きいのは、求人広告のみで採用した場合は低く、人材紹介会社フル活用の場合は高額になるためです。一方、すでに自社で受け入れている技能実習2号生を特定技能に移行採用する場合は、人材紹介料や送り出し機関料が不要になるため初期コストを大幅に抑えられます。
海外採用(現地採用)なら追加でいくらかかる?
候補者が海外在住の場合、上記に加えて渡航関連の費用が発生します。代表的な海外採用特有の費用と相場は次のとおりです。
- 海外現地での面接渡航費: 採用担当者が渡航して現地で面接・選考を行う場合の費用です。渡航費・宿泊費・日当などで、2名×2日訪問で20~30万円程が目安とされています。オンライン面接で済ませれば不要ですが、ミスマッチ防止のため現地訪問する企業もあります。
- 特定技能人材の渡航費: 採用した外国人が来日する際の航空券代等です。国や時期にもよりますが片道数万円(おおむね4~10万円程度)が相場で、企業負担とすることがほとんどです(※特定技能では法的には本人負担も可能ですが、企業が立替えるケースが一般的)。
- 来日サポート費: 来日直後の空港出迎えや、入居・役所手続きの同行サポートにかかる費用です。登録支援機関に委託している場合は支援業務の一環として行われますが、自社対応する場合は空港送迎の交通費や宿舎への初期備品支給などに実費負担が生じます。
- 送り出し機関への費用: 外国人の母国側での日本語研修・マナー教育・人材仲介を行う「送り出し機関」(送出機関)に支払う費用です。国ごとに上限制限がありますが、例えばベトナムでは給与3か月分程度が相場とされています。一般には1人あたり数万円~数十万円(例:3~20万円程度)。国外から呼ぶ場合、送り出し機関の関与が必要な国籍かどうか確認しましょう(フィリピンやネパールなど一部国は政府認定の送出機関を通さないと特定技能人材を送り出せません)。
以上を合計した海外採用時の追加初期費用は、1人あたり約38~75万円が目安です。つまり海外から新規に人材を呼ぶ場合、国内採用よりプラス数十万円のコストを見込む必要があります。渡航費を本人負担とすることも可能ではありますが、実務上は企業負担とする例が多いため、予算計画に入れておくと安心です。
職種・業種および地域による費用の違い
特定技能の費用相場は、受け入れる業種や地域によっても差異が見られます。ここでは特に費用負担が大きくなりがちな建設業を中心に、業界固有の費用や地域差について解説します。
建設業分野の特定技能:追加費用と制約
建設業で特定技能外国人を雇用する場合、他業種にはない独自の費用負担が生じます。具体的には以下のような項目です。
- 国土交通省への許可申請費用: 建設分野では入管に在留資格申請を出す前に、国交省から特定技能受入れ企業としての許可を得る必要があります。その申請書類作成費用として4~8万円程度/回の支出が発生します(※行政書士への依頼料に含まれる場合もあり)。
- 業界団体への加入・年会費: 建設業で特定技能を受け入れる企業は、指定の業界団体への加盟が必須です。代表的な団体「一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)」の場合、入会金・年会費が5~24万円(団体種別による)かかります。他の39の関連団体でもそれぞれ年会費・月会費が定められているため、所属団体の費用を確認する必要があります。
- JACへの受入れ負担金(人材管理費): 上記年会費とは別に、特定技能労働者1人あたり月額1.25~2万円の負担金をJACに納める必要があります。これは建設分野特有の外国人就労者支援費で、技能実習から特定技能への移行ルートや国外試験合格者かどうかで金額が異なります。
- 有料職業紹介の禁止: 建設分野では民間の人材紹介会社による有料紹介が原則禁止されています。そのため、特定技能人材の募集はハローワークやJACの求人サイト等を活用する必要があります(結果的に紹介手数料は発生しないものの、自社での人材発掘に工数がかかる点に留意が必要です)。
以上のように、建設業での受け入れには許認可や団体加入に伴うコストが大きく、他業種より初期費用・維持費用が割高になる傾向があります。実際、ある調査では建設業における特定技能人材1名の紹介手数料は平均約45万円と試算されており、他分野(一般に10~30万円)より高額との報告もあります。もっとも、建設業界ではそもそも特定技能への移行候補として技能実習2号修了者が多数存在するため、紹介料なしで移行採用するケースも多く見られます。
その他分野の特徴と地域差
その他の14分野(介護、外食、宿泊、製造業分野等)では、建設業のような有料協議会加入義務は今のところありません。各業種とも受入企業は所轄省庁や業界団体が設置する分野別協議会への加入・報告が求められますが、2025年現在、年会費が必要なのは建設分野のみとされています。ただし将来的に他分野でも有料化の可能性が指摘されており、最新情報のフォローが必要です。例えば林業分野では協議会加入が必須(現状費用負担なし)ですが、より多くの支援や連携が求められるでしょう。
地域差については、主に人件費と住居費の違いがコストに影響します。例えば都市部では最低賃金水準が高いため、同じ職種でも地方より高い給与設定が必要になることがあります。実際、特定技能外国人の全国平均月給は約17.46万円というデータがありますが、東京など都市圏の企業では20万円超えのオファーも多く見られます。一方、地方では地域の日本人賃金相場に合わせて18万円前後に抑えられるケースもあります(※ただし法律上、日本人と同等以上の報酬が必要なので、安すぎる設定はできません)。
また、住居費用も地域で大きく異なります。例えば都心部でワンルームを借り上げると敷金・礼金だけで数十万円になることもありますが、地方都市では初期費用が数万円程度で済む物件もあります。登録支援機関のサービス内容にも地域性があり、遠隔地の企業を支援する場合は担当者の訪問交通費が別途請求されることもあります。以上のように、「地方だから一律に安い」わけではありませんが、都市圏と地方で費用構造に違いが出る可能性がある点は考慮しておきましょう。
受け入れ企業が負担するその他のコスト
特定技能外国人の受け入れでは、紹介料や支援費以外にも企業側が見込んでおくべき支出があります。ここでは住居関連費用や教育・研修費用など、企業負担となる主な項目を挙げます。
住居の準備費用・家賃補助
住居手配は受入企業の重要な支援事項の一つです。特に海外から呼び寄せる場合、本人が自力で物件探しや契約をするのは困難なため、企業が住居を確保してあげる必要があります。具体的には、不動産業者への問い合わせから契約手続き、入居時の保証人引き受けや生活インフラ整備まで、企業側でサポートします。その際に発生する初期費用(敷金・礼金・仲介手数料・保証料・家具家電購入費等)はすべて企業負担です。特定技能制度では、これら住居準備費用を本人に請求することは禁止されています(技能実習制度と異なり、特定技能では企業側が負担すべき義務的支援と定められています)。
用意する住居には一定の基準があります。例えば「1人当たり7.5㎡以上の居室面積が確保された部屋であること」などがガイドラインで示されており、劣悪な住環境にならないよう配慮が必要です。また契約名義によって費用負担の範囲が変わります。以下のようなパターンがあります。
- 企業が借上げ社宅として提供する場合: 賃貸契約を企業名義で結び、外国人に部屋を貸与します。この場合、敷金・礼金・保証料など契約時の初期費用は企業負担となり、外国人本人に請求できません。一方、毎月の家賃については給与や近隣相場を勘案しつつ、一部または全額を本人に負担させることが認められています。常識の範囲内であれば家賃天引きも可能です。
- 企業所有の社宅を提供する場合: 企業が自社保有する社宅や寮を住居として提供するケースです。新たに物件を借りるわけではないため初期費用はゼロですが、社宅使用料や共益費をいくら本人負担にするか取り決めが必要です。こちらも家賃相当額の一部を本人に負担させることは可能です。
- 本人が自分で賃貸契約する場合: 企業は物件情報の提供や不動産会社紹介、契約時の同行サポート、保証人引き受けなど間接的な支援を行います。契約・支払い自体は本人が行うため、企業は初期費用・家賃を負担する必要はありません。ただし、保証会社利用料や緊急連絡先対応などで企業側が協力する場合があります。
基本的に、特定技能では毎月の家賃は本人が全額負担しても構わないとされています(※技能実習生の場合は家賃控除額に上限があるため、この点は特定技能の有利な点です)。もっとも、企業が家賃補助を支給したり、社宅ルールで低廉な寮費を設定したりすることで、外国人労働者が安心して長く働ける環境を整えている例もあります。住宅支援はコスト負担でもありますが、離職率低減や労働意欲向上につながる福利厚生策として検討する価値があります。
教育・研修費、各種手続き費
日本語教育や業務研修にかかる費用も、必要に応じて企業が負担します。特定技能1号で働く外国人には日本語試験(原則N4以上)および技能評価試験の合格が求められます。もし採用予定者がこれらの要件を未達の場合、試験合格までの学習費用や受験料を企業側でサポートするケースがあります。例えば参考書代・受験対策講座受講料、試験受験料(日本語JLPT/NAT-TESTや分野別技能試験など)は会社負担としている企業もあります。
入社後についても、外国人労働者の習熟度に応じて社内外の研修を実施することがあります。新人研修や安全衛生教育、OJT指導にかかるコストは日本人社員の場合と同様に企業負担となります。特に言語や文化の違いから生じるトラブルを防ぐため、異文化理解研修やコミュニケーション研修を実施する例も見られます。その費用も数万円~十数万円程度を見積もっておくと良いでしょう。
また、健康診断や福利厚生費も忘れてはならないコストです。【雇入時健康診断費用】は前述の通り企業が負担し、定期健康診断(年1回)についても他の従業員同様に実施します。【社会保険料の事業主負担分】(厚生年金、健康保険、労災・雇用保険の会社負担分)も発生します。これは給与の約15%程度に相当し、月給20万円なら企業側負担は約3万円です。日本人社員を雇う場合と同様のコストですが、特定技能外国人のみを新たに雇用する企業にとっては見落としがちな項目なので計算に入れておきましょう。
さらに、外国人特有のサポート体制として、社内相談窓口の設置や外部専門サービスの利用を検討する企業もあります。例えば多言語対応の労務相談サービスやメンタルヘルスサポート、24時間対応の生活相談ホットラインなどを契約する場合、その利用料が月額数千円~数万円程度かかります。こうした費用も「特定技能外国人の受け入れコスト」として包括的に捉えておくと万全です。
信頼性を高めるための最新データと事例
最後に、特定技能に関する信頼性の高いデータや最新の事例をいくつか紹介します。制度設計上まだ新しい特定技能制度では、公式統計や現場の声を踏まえた情報収集が重要です。
- 出入国在留管理庁(法務省)調査データ: 令和4年(2022年)実施の調査によれば、登録支援機関への月額支援委託料は平均28,386円で、90%近くのケースが月額3万円以下だったことが報告されています(前述)。最多ゾーンは2万~2.5万円で約26%、次いで1.5万~2万円で25%とされ、分布は図表化もされています。このデータは三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる2023年発表の調査結果にもとづくもので、支援費の相場観を示す客観的根拠となります。
- 初期費用の総額目安: 「外国人採用の窓口」(企業支援メディア)による2025年の解説記事では、特定技能外国人1人あたりの初期費用は国内採用の場合36~156万円、海外採用の場合はそれに+38~75万円程度とまとめられています。同記事は費用項目ごとの詳細な内訳表も掲載しており、実務に即した数字として参考になります(2025年5月公開)。
- 低コスト運用の事例: 支援費用の負担を抑える工夫として、支援業務の一部を自社対応する企業も増えています。要件を満たせば企業自身が登録支援機関となって外国人支援を実施可能で、その場合毎月の委託料をゼロにできます。ただし語学堪能で実務に精通した人材配置などハードルも高いため、現在のところ大企業や経験豊富な一部企業に限られています。また、登録支援機関側でも料金競争が起きつつあり、月額1万円以下という破格の支援プランを掲げる所も登場しています。例えば愛知県のある登録支援機関では月額9,800円/人で充実した支援サービスを提供しており、同社によれば「この価格帯の機関は全体の6.4%しかない」とのことです。(※極端に安価な場合はサポート内容が不十分なリスクもあるため、費用とサービスのバランスを見極めることが大切です。)
- 企業の声・口コミ: 特定技能制度について企業担当者からは「日本人採用より低コストで即戦力を確保できた」との前向きな声がある一方、「支援機関への毎月の支払いが負担」や「思ったより初期費用がかさんだ」という声もSNSや業界フォーラムで聞かれます。特に、前述の川村代表のように中間業者を介さず直接雇用することが理想との意見も出ており、費用面・運用面の課題に対する模索が続いている状況です。今後、特定技能2号の拡大や制度改善が進めば、費用負担の構造にも変化があるかもしれません。最新の行政動向や各業界の事例については、法務省や業界団体の発表を注視してください。
まとめ
特定技能外国人の受け入れ費用は多岐にわたり、初期コスト(採用関連費用)とランニングコスト(支援費用等)に大別できます。初期費用は国内採用で数十万~150万円前後、海外採用ではさらに渡航・送出し費用が加わり100万円超となるケースもあります。雇用後の費用としては、登録支援機関への月額費用が1人あたり約2~4万円、数年ごとの在留資格更新費用(数万円)などが挙げられます。
費用水準は採用経路(自社募集か仲介利用か)や採用対象(国内か海外か)、業種(追加の協議会費用等の有無)によって大きく変動します。さらに人件費や家賃相場といった地域要因も影響しますので、自社の状況に合わせてシミュレーションしてみましょう。特定技能外国人は日本人と同様の労働法規が適用されるため、**社会保険料や賃金(最低賃金以上)**の負担も忘れずに計算に入れる必要があります。
最後に、費用面だけでなく支援体制の充実や信頼できるパートナー選びも重要です。単に安価な登録支援機関を選ぶのではなく、支援内容や実績を確認して決めることが、結果的に外国人の定着率向上につながります。本記事の情報(出典と発信年月は以下参照)を参考に、予算計画と受け入れ準備を万全に整えていただければ幸いです。
