特定技能外国人の離職理由とは?背景・分野別傾向・防止策を徹底解説
作成日:2025年7月28日
最終更新日:
特定技能外国人の離職率は制度開始以来、自己都合で約16.1%にのぼり、主な退職理由として「職場環境」「給与」「人間関係」「キャリア不安」「生活面の困難」などが挙げられています。本記事では統計データをもとに背景要因を整理し、企業が取るべき具体的な対応策を解説します。
1. 離職率と統計データ
出入国在留管理庁の資料によれば、制度開始(2019年4月)〜2022年11月までの自己都合離職者は約19,891人、≒16.1%の離職率です。これは約83.9%の外国人が同一資格内で継続就労していることを意味します。
2. 分野別・国籍別の離職傾向
分野 | 離職率(自己都合) |
---|---|
宿泊業 | 32.8% |
農業 | 20.1% |
飲食料品製造業 | 19.3% |
外食業 | 19.6% |
介護 | 10.6% |
自動車整備 | 8.9% |
宿泊業・農業・外食業では高離職率が見られ、特に体力負担や労働環境の厳しさが影響しています。
国籍別では、ベトナム人は給与不満(31.8%)、インドネシア・ミャンマー人は人間関係不満(約30%)が多く報告されています。
3. 具体的な離職理由の背景
業務・職場環境への不満(31.4%)
仕事内容が合わなかった、体力的な負担が大きい、業務量が多すぎると感じることで退職に至るケースが多くあります。
給与・待遇への不満(29.1%)
税・保険料や物価負担が重く、実質手取りが少ないと感じる外国人が多く、昇給基準が不透明なことも不満の要因になります。
人間関係・文化・言語の壁
日本語能力がN4程度でも現場では足りず、職場で孤立するケースがあります。暗黙の習慣や日本語理解不足がストレス要因です。
生活支援・環境整備の不足
住居支援、銀行口座、携帯契約、相談窓口など生活面の支援が不十分だと、労働ストレスのみならず心理的疲弊も引き起こします。
キャリア不安・将来への不透明感
特定技能1号は最大5年の在留期限があり、将来的な認定や2号移行、永住の見通しが不明確なことにより、転職や帰国を決断する人も多いです。
4. 離職は必ずしも悪ではない:離職後の対応状況
離職者のうち、帰国したのは約31.4%。転職で定着した人が30.3%、他資格へ切替えた者含めると約45%が日本に残って就労を継続しています。
制度上の柔軟性を活かしてキャリアチェンジするケースも多く、離職=制度失敗とは限らないことがわかります。
5. 企業による離職防止のための対策
- 期待値管理・求人段階での給与・業務内容の明確化
- 労働条件や待遇の透明化、昇給制度の提示
- 日本語教育や文化研修、母語対応のサポート体制整備
- 定期面談・相談窓口の設置、生活支援体制の強化
- キャリアパス提示(2号移行、永住・定住支援)と技能評価制度の整備
これらの施策は企業だけでなく登録支援機関と連携して推進するとより効果的です。
6. よくある質問(FAQ)
Q. 特定技能の離職理由で最も多いものは?
A. 「業務・職場環境への不満」が約31.4%と最多で、仕事内容や労働負荷への不一致が主要因となっています。
Q. 給与が原因の離職も多いですか?
A. はい。給与・待遇への不満は約29.1%に上り、特に物価負担の大きさや昇給制度の不明確さが不満要因となっています。
Q. 日本語や文化の違いが離職に影響しますか?
A. 影響します。言語や職場文化の違いがコミュニケーション不全や孤立感を招き、離職につながるケースが多く報告されています。
まとめ|離職理由を理解し、制度的定着へつなげよう
特定技能外国人の離職動向を正しく把握することで、企業側の支援策や受入体制の改善余地が明確になります。特に待遇、環境、支援体制、キャリア設計の提供は離職防止の鍵です。
制度の柔軟性を活かしつつ、早期離職リスクを抑え、定着率を高めることで、企業と外国人双方にとってメリットある人材活用が実現できます。
